2020年3月の記事一覧
新型コロナウイルス感染防止のための臨時休業中のICTを活用した学習について
ふたば未来学園では、臨時休業期間中の学習の遅れや進学等の不利益を生まないよう、スクールタイムについては学習時間とし、生徒たちは各教科からの配布済み課題に取り組んでいます。その際、本校に常駐しているNPOカタリバとともに学校全体でのICTの積極的な活用を検討しました(タブレット、Classi、Google、ZOOM等)。中高生ともに、毎朝クラスのホームルームをClassiもしくはZOOM上で行ったり、各教科等のオンライン講座、個別面談、オンラインランチ会、オンライン読書指導(図書の郵送貸し出しも可)等を実施したりしています。
こうした本校の取り組みは、文部科学省からも「学校の臨時休業の実施状況、取組事例等について【令和2年3月6日時点】」※として紹介されています。
※https://www.mext.go.jp/content/202000306-mxt_kouhou01-000004520_3.pdf
1 ICT利活用の目的
① 学習に向き合う姿勢を整え、学習の遅れが生じないようにする
② 興味関心を高めるイベントを提供し、学びに対する意欲を高める
③ 気軽に参加できる教職員や学習支援スタッフ滞在型のオンラインの居場所環境をつくり、心的ストレスの軽減を図る
2 期間
2020年3月4日(水)~3月19日(木)
※ 土日祝を除く。休業期間が延びた場合、期間を延長する可能性あり
3 具体的学習形態
① オンライン学活・HR【中学・高校 全生徒】
中学生については、毎朝8:40にクラス毎にZOOM上で学活を行う。担任が起床・健康確認、連絡等を行う。その後接続されていない家庭には電話連絡をする。
高校生については、毎朝9:00迄にClassiにログインして、各クラスグループ内のメッセージや調査事項に対して回答する。回答がない場合は担任から連絡をする。
② ICTを利用した課題の進み具合の確認【中学 全生徒、高校 対象生徒】
中高ともに各教科で個別に課題を提示している。
中学ではZOOM上で各教科の課題の進み具合を確認するミーティングを行う。参加生徒や日時は教科担当教員がホームページ上で指示し、タイムテーブルを組んで実施する。高校ではClassi上で期限を設けて課題の提出を行ったり、添削指導を行う教科もある。
③ オンライン学習会【中学・高校 希望者】
ZOOM上で希望者を対象に学習会を実施。教員による各教科の学習会の他、NPOカタリバの本校常駐スタッフによるオンライン学習ルーム(スタッフがオンライン上で学習に関する質問に答える時間)を設置。何れも学年毎にZOOMのURLを分けて参加の障壁を低くしている。また、直近の成績や家庭環境から参加必要性が高い生徒には教員が個別に呼びかけて参加させることとしている。
また、国公立大学受験者の指導、海外研修渡航予定メンバーのミーティング等も別途ZOOM上や電話も活用しながら実施する。
④ オンライン学習イベント【中学・高校 希望者】
NPOカタリバの本校常駐スタッフや、本校教員による学習イベントを実施(実施計画例「英語探究~映画を英語で見て会話表現を学ぼう~」「歴史探究~世界のパンデミック史、我々はどう向き合うか」「化学探究~身近の化学現象を本気で考えよう~」「探究の行動プランを作る」「2040年の世界~AI×テクノロジー~」「休みの有効的な使い方について等
⑤ オンライン読書指導【中学・高校 希望者】
メールや、ZOOMの面談で担当教員や司書に探究(総合学習)や学習等に関する読書相談、レファレンス(調査相談)、選書相談等を行える体制を整え生徒に周知している。貸し出しを希望する生徒に対しては郵送で対応することとしている。
⑥ オンラインランチ会【中学・高校 希望者】
ランチを持ち寄りZOOM上でNPOカタリバスタッフや同級生と交流する時間を設定している。
※ オンラインで実施する学習については、何れもWifi環境がなかったり、接続状況が不安定で参加できなかったりする生徒に対して個別に電話などで対応。
令和元年度福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校卒業証書授与式 式辞
本日、ここに、福島県立ふたば未来学園中学校第一回卒業証書授与式並びにふたば未来学園高等学校第三回卒業証書授与式を挙行することができますことは誠に喜ばしく、学校を代表して皆様に厚く御礼を申し上げます。
また、ここまでお子様の成長を支えてこられた保護者の皆様に心よりお祝いを申し上げます。
中学校の卒業生の皆さん、卒業、おめでとう。皆さんは、猪苗代から広野への移転、転校という困難にも負けずに、全国大会で男女優勝という素晴らしい結果を残すとともに、開校まもない中学校の最上級生として立派に学校生活を送り、今日の晴れの日を迎えました。どうか胸を張って、高校へ進んでいってほしいと思います。
高校3期生の皆さん、卒業おめでとう。3期生は、1期生と共に学んだ最後の世代であり、この学園の黎明期にあって、この学園の礎を築き、校風をつくり出してきた世代です。
では、君たちは、どんな校風をつくり出してきたのでしょうか。
それは、第一に、多様性を力に変える対話と協働の文化です。この学校は、本当に多様な人間の集う場所になりました。多様な生徒、地域の皆さん、行政、企業、大学、NPOなど、様々に異なる境遇、利害、考え方をもった人々が、それらの違いを越えて語り合いました。そして、未来を創造していくために、机上の学問で終わらずに現実社会に踏み出して様々な協働を進めました。その中で、君たちは、多様な人が多様なままに共に生きることを学び、多様性を力に変えることを学んだのです。
第二に、困難な中にあってもあきらめず、共に前を向く生き方です。君たちは、演劇やフィールドワークなどをとおして、現実社会の矛盾や容易には解決できない問題から目を背けずに、わかりあえない中にあっても共有できるところをなんとか見つけ出して、それを少しずつでも広げていく、そんなコミュニケーションの仕方が、福島にこそ求められているのだということを学びました。とてもつらい経験をしている人や地域の現実とその背景にある問題の本質にしっかりと向き合うことを通して、自分とは関係ないように見える人とも、傷を負いながらそれでも前を向く、その精神において共感し、共に歩む強さ、レジリエンスを身につけたのではないでしょうか。それは、「福島を生きる」者としての、しなやかで新しい力です。
第三に、自由な精神です。ここで言う自由は、他を顧みず何の制約もなく自分の欲望のままに動くことではありません。異なる価値観や考え方を持つ人達が互いを尊重しあい、共に生きる社会を目指す精神や生き方のことです。そうした意味での自由は、生徒や市民の未熟さを前提として、ルールを守らせ、管理することのみでは決して実現しません。本校生徒会は、今年度、生徒総会で「宣言」文を決議しました。「ふたば未来学園は私たちがつくる」と力強く宣言したこの文章には、魂がこもっています。この宣言は大きく3つの部分からなります。まず、先生や大人が考えるのではなく、自分たちで考え、決断し、行動しようということ、次に、それぞれの理想、個性を、違いを認め合おうということ、そして、挑戦を積み重ねようということ。本当に素晴らしい。これ以上の宣言はありません。君たちは、この宣言をもとに、学校のルールの一部を自分たちの力で変えました。ここに、確かに自由な精神が芽生えたのです。
対話と協働の文化により多様性を力に変え、共に困難を乗り越える生き方と自由な精神で夢に向かって挑戦し続ける、それがふたば未来学園の目指す変革者であり、学校の姿、校風ではないでしょうか。
しかし、現代の社会には、真逆の風が吹いています。私たちの目の前には、そして世界には、戦争、偏見と差別、いじめ、分断と抑圧、環境の破壊などの課題が満ちあふれています。見えない壁が人と人を隔てつつあります。そのような時代だからこそ、国籍、性別、文化、価値観の違い、多様性を尊重しあい、むしろ力に変える、そんな生き方をしていってください。多様な人と対話し、違いを越えて協働する、本校でやってきたまさにそのことを、人生の様々な局面で、これからも続けていってください。
そして、自分とは関係ないように見える人とも、傷を負いながらそれでも前を向く、その精神において共感し共に歩む「福島を生きる」者としての、しなやかで新しい力こそが、これから何十年にもわたり続く復興と、福島を生きる私たち一人一人の道を照らす光となるのです。
また、ここ双葉郡、福島がそうであるように、世界のあらゆるところで、スポーツの世界でも、変革、独創、イノベーションが待ち望まれる時代を迎えています。そのためには、君たちが本校でやってきたように、のびのびと、楽しく、柔軟に、発想を転換して、新しい組み合わせや新しい解釈、新しい視点を持って、自由に様々なことに挑戦していってほしいと思います。
君たちは、本校での学びを通して、混迷を深める世界、いわば大海原を進む上で必要な羅針盤を手にし、共に櫂をこぐ友を見いだし、嵐を乗り越えて新しい世界を発見していく力を身につけたのです。
さあ、新しい航海が始まります。自分の手でドアを開き、前へ進んでください。いつの日も、世界の多様性にひるまず、むしろ楽しんで。様々な人と語らい、力を合わせて。与えられるのではない、自分たちでつくりだす「未来」へ。
令和2年3月1日
福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校長 丹野 純一