福島大学 人間発達文化学類 特任教授 中田スウラ先生 「子どもの貧困と地域社会 ~教育と福祉:教育を支える学校・家庭・地域の連携~」 を以下にまとめます。 ・・・・・・・・・・・ 現代社会と自分の生活がどのようにつながっているのか、 というのを考えていきたいと思います。 中高生の頃、受験勉強の教育についていけなくなって、 学校や教育って何のためにあるのかな、考えました。 人生80年の1/4は学校につながっているけど、 その後の人生は学校ではない…。 専門は教育学ですが、 地域社会の中で子どもがどう育っていくのか、に興味があります。 震災後、福島県・双葉郡は社会問題の縮図のような地域になりました。 子どもが少なくなったら義務教育はどうなるのか って思ったことありません? 学校の統廃合…もっと少なくなったら、 学校を存続させ続けることができるか分からない。 地域の文化的施設に恵まれてる地域とそうでないとこともあるし。 双葉郡は震災疎開みたいな形になったから、 生活環境の中の資源が少なくなってきた。 それをどう復活させていけるかってのを大学でやってます。 子ども達の未来を見守って応援する地域社会を、双葉郡は必要としてます。 その問題は30~50年後の 全国の地方でおこる少子高齢化の現実とつながっていきます。 そういう意味では双葉郡の経験値は、 全国の教育・学校をリードする貴重な財産です。 皆さんは新しい教育づくりの牽引者。 そんなこともあって、現代社会のひとつの大きな課題として、 子どもの貧困っていうのを共有しておきたいです。 子どもの貧困が全国的に注目されている中、 子ども食堂が増え続けています。 昨年ぐらいから、コロナで職を失うご家庭が増えて、 2019年の段階で3718…福島県内で60カ所。 子ども食堂の背景は、子どもの貧困と それに絡む児童虐待が問題です。 子どもの成長を支えていく事が 現状、各家庭だけには任せきれない。 社会的支援が必要だと思います。 ふくしま子ども食堂ネットワークをみると、 食堂が全県的に広がっているのが分かりますね。 県内の大きな市では、子ども食堂の支援が広がっているが、 町村には届いていません。 逆の見方をすると、まだ地方は 地域ネットワークがセーフティーネットとして機能しているからかもしれません。 貧困には絶対的貧困と相対的貧困という考え方があります。 絶対的貧困は、もうほんとに食べていけない、住む場所がないっていうもの。 いま問題になっているのが相対的貧困。 その国の生活水準と比較して、それに達していないということ。 具体的に言うと、 標準的な所得の中央値の半分に満たない状況の生活をさします。 例えばこんなケースです。 親が病気のために子どもが家事をする、 食費を切り詰めるために十分な食事がとれない、 大学進学は諦める、 学生でも毎日アルバイトをする生活をしている家庭など。 相対的貧困率の推移を見ていくと いくつかの特徴があることが分かりました。 二人親世帯より、一人世帯の方が高い。 一人世帯でも父子家庭より母子家庭で貧困率が高い。 問題は世界の状況から比べて、日本の子どもの貧困率は高い。 先進諸国内でも高い。 貧困は経済的側面だけではなく、 美術館に行くとか映画を見に行く、 塾に行くとか文化的資本にアクセスしづらくする。 さらに健康問題やリテラシーの格差… 例えばスマホが手に入らない、 通信環境等の問題でPC活用能力で差がついてしまう。 こういう状況にあるので、国も就学支援を整えようとしており、 奨学支援の申請率は上昇し続けています。 それだけ困っている人が増えているんですね。 家庭の経済が整っていないと親御さんも精神的に不安定になりますし、 子どもに対してその不安をぶつけることも起こらないわけでもない。 貧困と児童虐待は直結しないほうがいいけど、 そういう要素があることは否めません。 なぜ子どもの貧困が生じるような経済社会が生まれたのか? 子どもの貧困を耳にするようになったのはここ10~15年です。 バブルって聞いたことあります? 1990年ごろ日本の企業がダメージを受け、 日本企業が雇用条件を変えて人件費を抑え 経営を立て直すために、契約職員や非常勤の人が増えた。 終身雇用から変わったんですね。 1990年ごろに20才だった人が50才ぐらい。 労働条件の不安定さと貧困問題がつながっている、という分析があります。 家庭の貧困は、個人の怠けとか努力不足じゃなくて、 社会の労働システムが代わってことによって発生してる、とみることができます。 だから社会的支援が必要す。 法律改正が行われましたが、 すぐには効果が現れず、5年~10年かかる。 それまでに社会はどう支援できるか。 貧困の問題で強調したいのが、 貧困は連鎖するということです。 親が貧困であることが子どもの教育機会を損ない、 それが進学をあきらめさせることになり、貧困の社会的連鎖が生まれる。 連鎖を断ち切るために、私たちはいろいろ連携しなくてはいけません。 そのひとつが子ども食堂です。 名古屋市の子ども食堂「つなぐハウス」、 1回150円でおかわり自由。宿題をしたり、遊んだりできる。 ボランティアやNPO法人の支援で経営している。 大人も来てよくて、 地域の第三の居場所として、町づくりにも一役かっています。 子ども食堂の始まりは池袋からはじまりました。 興味ある方は調べてください。 そして福島大学に入学して下さい。