開校経緯

震災と原発事故という、人類が経験したことのないような災害に見舞われ、いまなお、12万人の県民がふるさとを離れた地で、5度目の春を迎えている(平成27年春の時点)。避難している人に限らず、多くの県民が抱える困難は、今なお続いている。

双葉郡をはじめとした福島県の各地域では、震災と原発事故がもたらした被害や放射線への対応などの深刻な問題だけではなく、日本のあらゆる地域が直面している、少子化、高齢化、過疎化の急激な進行、疲弊する産業など地域・コミュニティが直面する課題が、震災と原発事故により、先鋭化している。双葉郡そして福島県はある意味で世界の「課題先進地域」となっている。

教育においては、震災前双葉郡に5校あった県立高校(双葉高校、浪江高校、浪江高 校津島校、富岡高校、双葉翔陽高校)は、県内外各地に設けたサテライト校で授業を続け、教育環境の整備に最大限努めてきたが、元の校舎での授業再開のめどが立たず、平成27年度からの募集を停止した。郡内で開校している高校が存在しない状況が4年間続いたことになる。

このような中、双葉地区教育長会が主催する「福島県双葉郡教育復興に関する協議会」(平成24年12月設置)において、平成25年7月末に、県立中高一貫校の設置を柱とする「福島 県双葉郡教育復興ビジョン」を決定・公表。双葉地区教育長会では、ビジョンの検討と同時並行で、「双葉郡子供未来会議」を実施。子供たちの考える双葉郡の教育として『動く授業』『世界とつながる』『夢を見つけるたくさんの「小さな窓」』等のキーワードが生まれた。

県と双葉郡地方町村会の協議の結果、中高一貫校については平成27年4月開校とされ、設置場所については広野町とすることが決定された。(中高一貫教育は、連携型で開始)


建学の精神

ふたば未来学園建学の精神 「変革者たれ」

 震災と原発事故という、人類が経験したことのないような災害を経験した私たちには、これまでの価値観、社会のあり方を根本から見直し、新しい生き方、新しい社会の建設を目指し、変革を起こしていくことが求められており、それは、未来から課せられた使命ということもできる。
 私たち人間は、理想とする未来の姿を思い描きながら、いま、ここにある現実を、少しずつ、少しずつ変えることができる存在である。それは未来を創造することにほかならない。
 ふたば未来学園は、まさに、未来への挑戦である。この学校は、双葉郡の方々の「双葉の教育の灯を絶やすことなく灯し続けたい」という強い願いと、復興を実現し、先進的な新しい教育を創造しようとする国など関係機関の熱い想い、そして、なにより、震災後、こどもたちの中に芽生えた、復興をなしとげようとする強固な意志、夢を実現しようとする意欲、新しい価値観、創造性、高い志を礎として、誕生した。
 君たち一人一人が、この学校の歴史と伝統を築き上げる、パイオニア、開拓者である。目の前には大きな海原しか見えない。道は君たちがつくるほかない。
 この地から、このときから、「未来創造」を始めようではないか。この校章が示すとおり、未来は私たち一人一人が互いに手を取り合って建設していくものである。人間は自分の生き方を自分で選ぶことができる存在なのである。わたしたちは、わたしたちの手でこの社会を変えていくことができるのだ。
 自らを変革し、地域を変革し、社会を変革する「変革者たれ」。この言葉をこの学校の建学の精神を表す言葉として、ここに刻もう。
 そして、私たちが変わるために、社会が変わるために、大切にすべき価値観や考え、変革のための理念は何か。それは、「自立」、「協働」、「創造」である。既存の価値観、システムに過剰に依存することなく、自律心を持って自分の頭で考えぬく主体性を身につける、「自立」。そして、どんな困難な課題であっても、多様な主体と共に力を合わせて立ち向かう、「協働」。さらに、これまでの社会のよさに磨きをかけながら、新しい生き方、社会をつくりだしていく、「創造」。
 ふたば未来学園は、「変革者たれ」という「建学の精神」のもと、「自立」「協働」「創造」を校訓として、「未来創造型教育」を力強く展開していく。地域と共に。世界と共に。


 生徒諸君、この学校で、主体的に学ぼう。共に学ぼう。現実社会に飛び出していって、答えのみつからないような難しい課題にも果敢に挑戦していこう。失敗を恐れず、自分こそが新しい生き方、新しい地域、新しい価値の創造者になるんだという気概を持って、いろいろなことに挑戦しよう。そして、自らと社会の変革を成し遂げていこう。
 君たち一人一人が「未来」である。

平成27年4月8日 初代校長 丹野純一


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ふたば未来学園建学の精神「変革者たれ」