2017年2月の記事一覧
平成28年度SGH海外研修(米国・ニューヨーク)第3日目
ニューヨーク研修の現地での活動2日目は、昨日に引き続きコロンビア大学を訪問しました。政治学部教授で東アジア研究所長も務められた政治学の大家、ジェラルド・カーティス先生との意見交換を行いました。カーティス先生からは、「福島の復興について」「今回のニューヨーク訪問で得たいこと」「世界に自分たちが伝えたいこと」等について、矢継ぎ早に鋭い質問を頂きました。海外の大学の授業スタイルを肌で感じる良い機会となるとともに、生徒たちはそれぞれの言葉で答えながら思考を深める大変良い機会になりました。大きな宿題も頂き、生徒たちは自分たちで答えを出してメールで報告することを約束しました。
その後、世界最高峰のコロンビア大学のキャンパスを見学し、大学での海外留学を少し考え始めた生徒もいたようです。
続いて、いよいよ国連へ。国際連合日本政府代表部(国連に於ける日本大使館)を訪問し、別所大使を表敬訪問するとともに、岸守参事官から「国連と日本・福島」について大変貴重な講義を頂きました。岸守参事官とは夕食もご一緒し、世界に日本や福島を伝えていく際の大切な考え方をたくさん教えて頂きました。
また、偶然同日から始まった、写真家エバレット・ブラウン氏による南相馬のSAMURAI写真展のオープニングにも出席し、アートで日本を発信している様子を体感しました。
詳細は生徒のレポートをご覧下さい。
○コロンビア大学はアメリカ合衆国前の1754年に設立し、全米で5番目に古い。また、世界屈指の名門大学としてノーベル賞受賞者を101名輩出しており、全世界から多くの優秀な研究者、留学生が集まっている。最近の著名な卒業生は米第44代大統領バラク・オバマ。
○ジェラルド・L・カーティスさんは、現在コロンビア大学政治学部教授であり、コロンビア大学東アジア研究所長や、東京大学法学部客員教授、慶應義塾大学法学部客員教授などを歴任した。専門分野は日本の政治外交、比較政治学、日米関係である。
○訪問では原発事故やふたば未来学園について7分間プレゼンテーションを行った後、K.N、K.Fが各自スピーチを行った。そして、約50分意見交換を行った。意見交換の内容は下記の通り。
○カーティスさんから様々な鋭い質問をされ、考えたり答えたりしている中で、私たちはこのニューヨーク研修に参加する意味を改めて知ることができた。
○このニューヨーク研修に参加して何を学校に持ち帰るかをしっかり考えることが問われ、M.Sは「私たちは福島と世界のために何ができるのか、何をすべきか」、H.Sの意見は「日本の中で日本人だけでもいろいろな考えがある、ましてやニューヨークは様々な人がいるからもっと違う考えがある。だからその考えを知りたい」と答えた。カーティスさんからは「グッドポイント」とコメントがあった。様々なバックグランドがあるニューヨークの人たちから日本は学ぶことができる。ということだ。
○日本社会の強みと弱みを考えなくてはならない。例えば強みの場合、原発事故があり、日本の20~30%を占めていた原子力が失われても日本はここまでやってきた。これは一人ひとりが物事に対して一生懸命に取り組んでいるからであり、海外から見ると驚くべきことだ。
○帰省困難が解除され、故郷に戻ってくるのはほとんどがお年寄り。それで、未来はあるのか?と問いかけられた。
○日本を知らない人たちにとって君たちは先生だ。ニューヨークの人たちに福島のことについて何を学んでほしいか?と問われ、私たちは福島の今の姿を伝えたいと答えた。
○最後に、M.Sが「復興とは何か?」と問いかけた。カーティス先生から「ヘビークエスチョン。私に答えは無い。未来は君たちの手の中にある」「経験を通して未来をどうしていきたいか考えることが大切。6年が経った今、普通に生活できるようになるまでにどれ位かかると思うか。君たちは福島から避難し続けるのでは無くこの学校に集ってきた。2030年、2050年に、君たちの未来をどうしていきたいか。」という重要な問いをいただいた。今回のジェラルド・L・カーティスさんの意見交換で答えられなかった問いが宿題となった。この宿題がこれからの福島の未来に役立つヒントになると思う。
○国連日本政府代表部を訪問し、別所浩郎特命全権大使を表敬訪問し、その後、岸守一(きしもりはじめ)参事官より、国連と日本の関係についての講義をいただいた。
○別所大使表敬訪問では、今回の米国研修を支えてくださっていることについて御礼をお伝えし、ふたば未来学園での6つの探究斑の取り組みなどを話した。高校生の話を熱心に聞いてくださり、とても尊敬のできる方であった。
○また、岸守一参事官より講義をいただいた。岸守さんは99年3月より在ジュネーブ国際機関日本政府代表部に勤務。2001年10月より1年間国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)執行委員会のラポトゥール(本会議への報告の方針を決める担当)を務め、その後UNHCR駐日事務所副代表を務める。2005年より現職。
○講義では 「国際連合という風景」を見つめる“まなざし”~見ているものは、実は見えているものではない~ という題で講義を頂いた後、意見交換を行った。講義と意見交換の内容は以下の通り。
(国連と日本の関係について)
○まず初めに国連と日本の関係について説明を頂いた。「国連の概要」「PKO、持続可能な開発のための2030アジェンダ」等について説明を頂いた。
○国連の決議や選挙などは多数決で決まる。そこで日本の意見を反映させるマルチ外交の場であると言っていた。過半数をとるために国と国の間でいろんな綱引きや貸し借りがある厳しい世界であるとのこと。
○日本が国連にお金を収めている拠出金は国連加盟国の中で第2位である(9.680%)。一方で国連に勤める日本人の職員は4%と少なく1000人未満(全職員25,000人)である。このような状況の中で日本の意見を通していく様々な工夫をされている。
(効果的な発信の方法について)
○次に、効果的な情報発信の仕方を教えて頂いた。相手に興味を持ってもらうためにも共通点を取り込んだ話をする必要がある。自分の話だけをするのではなく、相手の欲しいもの、情報をあげなければ聞いている側はつまらなくなってしまうのだ。
○具体例1:国連は一気に192か国に一気に話を聞いてもらえる効率的な場所である。同時に国連はアピール競争の場でもある。例えば、オランダはテラスに人工芝をひき、フットサルをしたり、タイではタイブレイクと名付けて外交官が楽器を弾いたり、レストランを貸し切りお酒を飲んだりして自国の文化をアピールしている。
○そこで日本は国連加盟60周年について発信するときに一方通行の展示ではなく、国連の中に土壁を作り、土壁にいろんな国の言葉で「平和」と書くことで双方向のやりとりにすることができるようにした。土壁で日本の文化を発信した。とても好評だったようだ。
○具体例2:震災の時に日本政府から福島は安全だと情報を発信しても信じてもらえなかった。そこで、一方的に発信するのをやめ、受信してもらいやすい人に代わりに言ってもらった。シカゴのフードブロガーによる東北食べ歩きブログの形で記事を発信した。聞き手自身の信じている人の言っていることの方が信じてもらえる。聞く耳を持ってくれていないところで大きな音を立てても意味がないから聞く耳を持ってもらえる方の力を借りる方法もある。
○具体例3:ある方が福島のプレゼンをした時に、福島県の話しかせず、相手の興味を持ってもらえるような話し方が出来なかった。
(ナポレオンの靴)
○ナポレオンの靴という逸話を知っていますか。ナポレオンは毎日いろんな場所に出かけ、靴は毎日汚れる。下司官が毎日靴を磨き、ある日、「靴を毎日磨いても汚れる。毎日磨く必要はあるのか」と問いかける。その次の食事で下司官にだけ食事はなかった。食事が出ないのが何回か続き、下司官はナポレオンに謝った。「どうせ食べても明日は腹が減るだろうから、食べても、食べなくても同じではないか」とナポレオンは答えた。前に進むために繰り返す。ナポレオンは非情でありながらもいい教えをしてくれたと思った。
(その他)
○「いい仕事をすればいつか必ず報われるはず(報われて当然だ)」というのは傲慢
「いい仕事をすればいつか報われるだろう(だから何もしない)」というのは怠惰
しかしこれは国連で働き出世するために必要なことであり、誰しもがこうならなければならないということではなかった。
○誰もいない森の中で大木が倒れるとき、はたして木の倒れる音はほんとうにした、と言えるのでしょうか? この言葉に似た歌詞で 届かなかった言葉は言っていないのと同じことで誰も知らないのはいないのと変わらないのかい? とある。私はそんなことはないと思う。誰も知らなくても誰にも聞こえていなくてもその場にはその場の時間が流れていて一つ一つが大切なものでと思う。しかし、伝わらなければ意味がない。
「あなたを動物か植物に例えると何ですか」と最初に聞かれた。その答えに岸守さんは「自分は水である」と答えるそうだ。水は動物でも植物ではない。形も温度も速さも変えられる存在でありたいとのことだった。答えは一つではないから、AかBかを問われた時に、正直にどちらかを選ぶだけではなく、答えは一つではないので、新しい答えがベストアンサーなのかもしれないとのメッセージをいただいた。「自分の求めている答えは自分の中には無く、持っている人から学べばいい」ともおっしゃっていた。