特色ある教育活動
ふたば未来学園は、原子力災害によって直面している福島復興の課題を乗り越えるとともに、全国・世界の課題解決に貢献し、持続可能な世界を実現していく「変革者」の育成を目指して教育課程を編成しています。
本校が育成を目指す「解のない課題」や「未知の状況」を乗り越えるための資質・能力を、独自に「人材育成要件・ルーブリック」として定義した上で、全ての学年において生徒がそれぞれ課題を設定して実社会の課題解決の探究に取り組みます。また、探究と各教科との往還によって深い学びを実現しています。
福島県内で唯一、文部科学省から「地域との協働による高等学校改革推進事業(グローカル型)」及び「スーパーグローバルハイスクール(SGH)ネットワーク校」に、令和5年度からは「ワールド・ワイド・ラーニング(WWL)コンソーシアム構築支援事業・拠点校」に指定され、先進的なカリキュラムによる人材育成を展開しています。
特色1 実社会での課題解決の実践・探究
課題解決型学習「未来創造探究」等において、実社会で山積している困難な課題に挑戦します。
中学校では、身近な地域を学習フィールドにして福島の歴史・伝統・文化を学びつつ、地域の「ひと・もの・こと」とのかかわりを通じて、自らの生き方を探究します。また、再生可能エネルギーによるまちづくりや少子高齢化への対策などの福島が抱える課題に向き合い、未来の社会の姿を考えます。
高校ではさらに取組を発展させて、福島や世界の課題を解決するためのプロジェクトを、各自が企画して実践します。原子力防災や再生可能エネルギーなど6つの探究ゼミに分かれて地域課題の解決及び地域再生の実践を行い、国内外で研究成果を提言していきます。
中学・高校あわせて常時200を超える地域活性化プロジェクトが進行しており、国際機関や企業等と協働して、実際に社会を揺り動かす経験から、課題解決に向けて行動するカや創造性など、実社会で活躍するための実践力を身に付けます。
(中学1年生の実践例)
- 少子高齢化が進行した地域に、にぎわいを取り戻すため、地域のよさを発見・活用し、交流人口や関係人口を増やしていくための企画を提案
- 詩人草野心平が「●」のみで創作した詩「冬眠」を様々な視点から考察し、型にとらわれない心平の表現力から生き方を学び続けていきたいとの意見を発表
(高校生の実践例)
- 福島の復興や全国の地域の少子高齢化等の課題を他人事ではなく自分事として考えてもらうことを目指して、全国の高校に呼びかけて、双葉郡ツアー、ホームステイ、同世代との議論などを組み合わせた「地域交換留学」を実施した。
- 双葉郡のイメージチェンジのための有効な方策を考える中で「味覚」を通して前向きなイメージを発信することとし、漁協や企業と交渉して地元の鮭を使った商品を開発・発売。広告やお勧めレシピも自ら制作して積極的に発信した。
- 福島第一原発の廃炉プロセスについて専門家と地域住民が率直に意見を述べ議論しあう場が必要との思いから、双方が参加する「高校生と考える廃炉座談会」を自分たちで開催し、廃炉のあり方を考察、提言した。
特色2 世界に飛び出す学び・海外研修
県内高校では唯一、文部科学省からスーパーグローバルハイスクール(SGH、令和元年度まで)、地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型、令和2年度より)に指定されています。この一環として地域から世界へ学びの視野を広げるために海外研修を行っています。
中学校では国内の様々な機関、施設等における研修を実施するとともに、海外からの来訪者を積極的に受け入れ、日常的な異文化コミュニケーションを通じて、グローバルな見方や考え方を育てていきます。一般選抜生は、CLILを取り入れた独自の授業「グローバル・スタディ科」で実践的な英語力を身に付けるとともに、3年生で全員が海外研修に参加し、探究の成果を世界に発信します。
高校では、1年次でドイツを訪問し、ホームステイをしながら同世代と持続可能な世界の実現について議論します。環境首都とも呼ばれるフライブルクで再生可能エネルギーによる町づくりを視察するほか、ホロコーストの教訓の伝承施設等も視察し、福島の今後を考えます。2年次では、米国ニューヨークの国連本部を訪問し、国連本部職員と意見交換を行います。また、現地の大学院生や世界の同世代と、「福島の課題」と「持続可能な世界実現の課題」とを重ね合わせて意見交換を行い、自身が取り組む地域課題解決の探究内容と、取り組みから見出した世界への提言を発信するとともに、持続可能な世界実現の課題意識を深めて持ち帰り、さらに未来創造探究を深めていく機会とします。
なお、各海外研修はプロジェクト型で実施しており、渡航数ヶ月前からの事前学習やプレゼンテーション準備、現地でのプログラムの検討・準備を生徒主体で行います。
特色3 アクティブラーニングによる深い学び・高い学力
各教科の授業も一方的に教わる講義形式にとどまらず、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の授業を展開します。例えば、地理的・歴史的事象を暗記するのみならず、データを分析・比較しながら自分たちで傾向をつかみとる授業や、お互いに作問し解きあう授業などを通して、テストのための知識の暗記ではなく、様々な場面で活用しながら深く思考できる力を育みます。
また、教科と実生活のつながりを感じつつ、単なる知識に留まらない、教科の概念的理解や見方・考え方を深め、生きて働く知識・技能を獲得することを目指して、教科協働の授業実践「クロス・カリキュラム」を展開しています。例えば、「世界史×英語」の協働授業として、留学生の英語プレゼンを聞いた後に、歴史的な見方・考え方を働かせながら質疑応答を英語で行い、東南アジアでの交易拠点の形成や宗教の伝搬過程について学んだり、「音楽×英語×現代社会」の協働授業として、英語の歌詞を翻訳しながら、奴隷差別の中生み出されたゴスペルがロックに繋がっていることを紐解いた上で歌い、能動的市民として社会の分断を乗り越える重要性を学んでいます。
中学一般選抜生及び高校アカデミック系列では、高い学力集団での切磋琢磨で、国公立大入試に対応できる学力を授業で身につけます。国語、数学、英語で習熟度に応じた少人数指導を行い、基礎・基本の着実な定着を図るとともに、中高の教員が連携したチームティーチングにより発展的な学習を行うなど、個に応じた指導できめ細やかに学びをサポートします。
特色4 演劇・シティズンシップ教育
中学校及び高校1年次では「演劇」を通じて、能動的な市民としての土台となる資質・能力を育成します。演劇教育の専門教員と外部講師の連携によって実施する各種ワークショップでは、自分と他者との違いに気づくこと、他者と対話を重ね協働すること、ことば・身体・表情の操作を試行錯誤すること、正解のない課題に取り組み楽しむことを通じて、表現力やコミュニケーション力、創造力を育成します。また、こうした活動を通じて、お互いの違いを認め合う寛容な学びのコミュニティを形成します。
高校1年次ではグループで協働して、復興に向けて地域が抱えている課題を取材し、演劇の台本にまとめて表現する学習を行います。実社会の課題や分断・対立の構図を多面的に見つめるとともに、演じることで状況に参与(追想)して問題を我が事として捉え、高校2年次からの本格的な実社会での課題解決の実践・探究に繋げていきます。
また、中学校では各界のリーダーから学ぶリーダー学、正解のない課題を深く考える哲学対話も行い、能動的市民としての土台となる思考力・スキル・人間性などをみがきます。
特色5 充実したサポート体制
平田オリザさんや為末大さんなど「ふたばの教育復興応援団」や大学、企業、NPOなどと連携した各界の第一人者による授業など、夢への窓をたくさん用意し生徒の挑戦を後押しします。
また、NPOカタリバの職員と大学生が校内に常駐し、毎日夜まで放課後の学習室を運営するなど、生徒一人一人の学びを手厚くサポートします。さらに、考査前には福島大学等の大学生が泊まりがけで学習支援に来校します。感染症対策の休校時には全生徒・全教科のオンライン授業を実施し、如何なる状況でも学びを支えるサポート体制を整えています。
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